全館空調の電気代は高い?エアコンとの比較や導入するメリットも解説
この記事では、四季を通して外気温に左右されない快適な温熱環境を提供してくれる、全館空調システムの電気代について解説します。
日本の気候は四季があって温暖だといわれていますが、実際は夏と冬の温度差が大きく、季節によって生活環境が大きく変化します。
このことは室内においても同様です。夏と冬の室温差が10度を超える地域も多く、特に冬場の室温の低さは、健康を害する原因にもなりかねません。
ここ数年、コロナを反映して健康に対する意識が高まるなか、「四季を問わず自宅の室温を快適な室温に保ちたい」と考える人も増えています。
この記事では、全館空調の電気代をエアコンと比較しながら解説するので、全館空調の導入を検討している人はぜひ最後までお読みください。
【この記事でわかること】
|
Contents
そもそも全館空調システムとは?
全館空調システムとは、一言でいうと住まい全体の空調を一括して管理できるシステムのことです。
全館空調システムは、小屋裏や床下に設置した大型の空調設備から配管ダクトを通して、一定の快適な温度に保たれた空気を家中に循環させます。
各部屋にエアコンを設置する通常のシステムと異なり、キッチンや浴室も快適な温度に保たれるため、冬場のヒートショックによるトラブルなどを避けられます。
全館空調システムの電気代が高いと言われる理由
全館空調システムの電気代が高いと思われがちな主な理由は、以下の2つです。
- 家全体を温度管理するため、空調を効かせる範囲が大きくなるから
- 24時間365日稼働であるため、家に人がいないときの電気代が無駄に思えるから
こうした理由から、広い範囲においてつけっぱなしにする全館空調システムを、電気代の観点で非効率だと捉える人は少なくありません。
それにもかかわらず、多くの電機メーカーやハウスメーカーが全館空調システムを推奨しています。
その理由は、エアコン特有の電力消費における特徴を理解して使用すれば、全館空調システムにしても電気代を低く抑えられるからです。
エアコンはスイッチ始動時において、平常時の10倍程度の電力を消費します。
そのため、各部屋に設置したエアコンのオン・オフを繰り返すと、一定温度を24時間保ち続ける全館空調システムよりも電力を消費してしまう場合があります。
エアコンの電力消費量は、全館空調システム以上に使い方で大きな違いが生じることを理解しておきましょう。
全館空調システムにかかる電気代をエアコンと比較
ここでは、全館空調システムにかかる電気代をエアコンと比較します。
まず、総務省統計局による2023年家計調査から、1〜7月までの電気代(2人以上の世帯平均)を見ていきます。
<2023年:2人以上世帯における電気代の全国平均>
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
1万7,190円 |
1万8,750円 |
1万7,228円 |
1万3,617円 |
1万1,174円 |
9,270円 |
8,627円 |
※2023年9月時点
※参考:家計調査|総務省統計局
また、全館空調システムの場合の電気代について、ハウスメーカーや電機メーカーの公表値などを総括すると、以下の値になります。
月別平均 |
1万5,000円程度 |
冬場(真冬)・夏場(真夏) |
1万5,000〜1万8,000円程度 |
春・秋 |
1万円程度 |
全館空調システムの公的機関のデータがないため正確な比較はできませんが、上表2つの結果を見る限り、全館空調システムの電気代が極端に高いとはいえません。
全館空調システムの場合、使用時間や延床面積によっても変動しますが、住宅の断熱性能や気密性能によって電気代が大きく変動する可能性があります。
24時間365日つけっぱなしで使用することもあるため、根本的な断熱性や気密性が低いと、夏は設定温度を下げて冬は上げなければなりません。
こうした場合、電気代が3〜4万円に高騰する可能性があります。
全館空調システムのメリット
ここでは、全館空調システムのメリットを解説します。
- 家全体を年中快適な温度に保てる
- 清潔な空気環境を維持できる
- 間取りの自由度が上がる
それぞれ見ていきましょう。
家全体を年中快適な温度に保てる
四季を問わず家中の室温を快適な温度に保てることが、全館空調システムの最も大きなメリットです。
全館空調システムでは、浴室や洗面所からトイレや廊下まで、家全体が適温で維持されます。
そのため、冬場のヒートロスによる健康障害や夏場のトイレ・キッチンでの不快な暑さを気にせず、快適に過ごせるでしょう。
清潔な空気環境を維持できる
機種にもよりますが、現在は空気清浄機能を備えた全館空調システムが主流になっています。
空気清浄機能がついている全館空調システムは、花粉やウイルス、有機化合物などを清浄してくれるうえ、悪臭もカットしてくれます。
温度だけでなく、クリーンな空気で満たされた住環境を提供してくれるでしょう。
間取りの自由度が上がる
通常のエアコンは、壁に仕切られた部屋面積を前提に商品ラインナップを決定します。
一方、全館空調システムであれば、空調によって部屋を仕切る必要がないので、間取りやレイアウトの自由度が高くなります。
通常、吹き抜けや小屋裏、大空間リビングなどは空調環境を整えるのが困難です。しかし、全館空調システムであれば、こうした心配は全くありません。
全館空調システムのデメリット
ここでは、全館空調システムのデメリットを解説します。
- 初期費用やメンテナンス費用がかかる
- 換気フィルターの交換が必要になる
- 部屋が乾燥しやすくなる
順に見ていきましょう。
初期費用やメンテナンス費用がかかる
全館空調システムの初期費用は、通常のエアコン設置にかかる費用に比べて高額になります。
一般的に多く普及している35〜40坪程度の4LDKで、初期費用を比較してみましょう。
全館空調システム |
壁掛け式エアコン4台 |
100〜250万円 |
50〜55万円 |
このように、全館空調の初期費用は商品によっては、エアコンの2〜5倍程度の費用がかかるケースがあります。
故障したときのことも考慮すると、初期費用がかかる点はデメリットです。
また、故障を未然に防ぐための定期点検及びメンテナンス費用として、年間1〜3万円程度の出費を見込んでおく必要があります。
換気フィルターの交換が必要になる
全館空調システムの性能を維持するためには、各種フィルターの掃除・交換が欠かせません。
各種フィルターの掃除・交換の頻度は以下のとおりです。
種類 |
掃除 |
交換 |
粗塵防虫フィルター |
3ヶ月に1回 |
2年に1回 |
給気清浄フィルター |
年に1〜2回 |
2年に1回 |
交換はメンテナンス時に実施し、フィルター代として1ヶ所あたり3,000〜6,000円程度が必要になります。
機種によっては上記以外のフィルターが設置されている場合があるため、その場合は設置した住宅メーカーに相談してください。
部屋が乾燥しやすくなる
全館空調システムには、室内が乾燥しやすくなるデメリットがあります。
全館空調システムに限らず、エアコンは乾燥した外の外気を取り入れるため、室内が乾燥しやすくなります。
外気が冷たく乾燥しやすい冬場に、室内の乾燥した空気で喉がカラカラになったり肌がカサついたりした経験がある人は少なくありません。
また、冬場の送風式暖房は、設定温度より高い温度の空気を室内に供給します。高い温度の空気は湿度を下げる特質があるため、さらに室内が乾燥してしまいます。
全館空調システムの電気代を抑えるコツ4選
ここでは、全館空調システムの電気代を抑えるコツを4つ紹介します。
- 風量を自動運転に設定する
- 天井吹出し方式を取り入れる
- 予約機能が付いた全館空調を選ぶ
- 断熱性と気密性が高い家にする
1つずつ見ていきましょう。
風量を自動運転に設定する
風量をシステムに任せると、最もコストパフォーマンスに優れた温度に調節してくれます。
弱風設定にすれば電力消費量は下がりますが、最適温度に達するまでの時間が延び、総電力量が大きくなる場合があります。
自動運転システムを効果的に利用して、電気代を節約しましょう。
天井吹出し方式を取り入れる
全館空調システムには、天井吹出し方式・壁掛けエアコン式・床下冷暖房式の3つの種類があります。
天井吹出し方式は、小屋裏に設置した空調設備から繋いだダクトを通して室内全域に冷暖房の空気を送り、各部の天井に吹出し口を設けて空調します。
最も効率的かつ確実に全部屋を空調できる点が特徴で、コストが抑えられている商品が多くあるため、全館空調を導入する際は天井吹出し方式のものがおすすめです。
予約機能が付いた全館空調を選ぶ
温度予約機能の付いた全館空調システムを選べば時間単位で温度を調節でき、電気代を抑えられます。
外出時は必要最低限の温度設定や換気機能のみの設定にし、帰宅1時間前から設定温度になるように予約しておくことで、電気代を節約できるでしょう。
電気代を抑制するコツは、帰宅1時間前に起動させ、徐々に目標温度に到達するような温度設定にすることです。
エアコンは一気に温度を上げようとすると電力消費量が大きくなるので、徐々に上がるような温度設定がおすすめです。
断熱性と気密性が高い家にする
全館空調を効果的に利用するために最も大切なことは、住宅そのものが高断熱・高気密であることです。
全館空調システムを高品質なものにしても、家そのものの断熱性や気密性が低ければ、室内の暖まった空気は外部に逃げてしまい、外部空気は簡単に室内に侵入します。
空調システムを検討する前に、住宅そのものが高断熱・高気密であることが大前提だと理解しておきましょう。
高知県でこれからマイホームを検討される人には、建匠の『極断熱の家』がおすすめです。
極断熱の家は、断熱性能において標準仕様で北海道基準のUA値0.46をクリアしており、空調システムを検討するには非常に適した性能を持っています。
断熱性、気密性だけでなく、耐震性・耐候性も非常に高い水準にあるので、これから新築を検討する人はぜひお近くのモデルルームに足を運んでみてください。
全館空調システムの電気代に関するよくある質問
ここでは、全館空調システムに関してよくある質問に回答していきます。
- 全館空調は部屋ごとに分けられる?
- 全館空調の電気代は家自体の日当たりが関係する?
- 全館空調は24時間つけっぱなしのほうがお得?
順に見ていきましょう。
全館空調は部屋ごとに分けられる?
全館空調システムの多くは、部屋ごとに温度を設定できません。
とはいえ、適正な温度環境であれば全館空調システムにおいて、暑がり・寒がりの人でも快適に過ごせるでしょう。
また、暑がりの人が多いイメージのある高知県においても「ストレスなく快適に過ごしている」といったお声をいただいております。
そのため、全館空調は部屋ごとに温度は設定できないものの、快適に過ごすことは実現可能だといえます。
全館空調の電気代には家自体の日当たりが関係する?
全館空調の電気代には家自体の日当たりが関係します。
全館空調システムを導入した家だとしても、室内の空調を調節する仕組みは通常のエアコンと変わらないので、家自体の日当たりが悪ければ電気代は高くなります。
日当たりだけでなく、建物そのものの断熱性・気密性、住んでいるエリアなどによって暖房効率は変化するので、こうした要因も電気代に影響します。
全館空調は24時間つけっぱなしのほうがお得?
全館空調システムの場合、頻繁にスイッチのオン・オフを繰り返すのであれば、つけっぱなしにして時間ごとに温度が変わる設定にするほうがお得になります。
風量設定の自動運転や予約機能を上手に利用すれば、24時間つけっぱなしでも電気代が極端に上がることはありません。
全館空調システムを導入するなら工夫しながら電気代を抑えよう
全館空調システムの導入を検討するなら、24時間365日つけっぱなしにして利用することを前提に、システムの機能自体を上手に使うことを考えましょう。
避けるべきことは、寒い真冬などに一気に温度を上げようと高めの温度設定にすることや、節約になると思って何度もシステムのオン・オフを繰り返すことです。
帰宅1時間前から設定温度に向かって徐々に室温が上がるように自動予約するなど、最適なコストパフォーマンスが得られる風量の自動設定を上手に利用してみてください。
全館空調システムを上手に利用し定期的なメンテナンスを実行することで、1年を通じて健康的でクリーンな空気に満たされた住環境を手に入れられるでしょう。
また、全館空調システムだけでなく通常のエアコンにおいても、高断熱・高気密性能の住宅であることが前提です。
建匠では、高断熱・高気密住宅の提案に合わせて、コストパフォーマンスに優れた空調システムも提案します。
断熱性や気密性に優れた住宅であれば、エアコンの台数を抑えた空調環境を作れるため、興味のある方はお近くのモデルルームで実際に体験してみてください。