高気密・高断熱住宅のメリット・デメリットは?後悔しないためのポイントも
この記事では、高気密・高断熱住宅のメリットやデメリットなどを解説していきます。
近年、国内の住宅市場において高気密・高断熱性能に対する関心が高まっています。
また、ここ数年の猛暑や新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻などにより、光熱費の高騰に拍車がかかりました。
こうした情勢において、使用電力量の削減効果が高い高気密・高断熱住宅に注目が集まっています。
この記事では、高気密・高断熱住宅を建築する際に後悔しないためのポイントも詳しく解説するので、家づくりに悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
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Contents
そもそも高気密・高断熱とは?
高気密住宅とは、一般的に隙間のない住宅を指します。
また、高断熱住宅は熱が逃げにくい特徴を持ち、夏は涼しく冬は暖かい点が大きな特徴です。
高気密・高断熱は、それぞれ以下の2つの数値で簡単にチェックできます。
- C値:気密性を表す数値
- UA値:断熱性を表す数値
それぞれ具体的に見ていきましょう。
C値
C値とは「住宅にどれくらいの隙間があるかを示す数値」で、相当隙間面積率ともいいます。
具体的な計算式は、以下の通りです。
- C値=隙間の総面積÷延床面積
当然ながら、このC値の数値が低いほど高気密の住宅になります。
ここでは、1999年時の次世代エネルギー基準におけるC値の基準表(※)を見てみましょう。
C値 |
隙間の総面積 |
気密状態 |
5.0未満 |
500平方センチメートル |
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2.0未満 |
200平方センチメートル |
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1.5未満 |
150平方センチメートル |
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1.0未満 |
100平方センチメートル |
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0.5未満 |
50平方センチメートル |
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※:C値に関しては、2009年の省エネ法改正により明確な基準は設けられなくなったが、1999年の基準では、北海道と東北の一部地域以外は5.0がC値の基準値とされている
現状では、C値1.0程度であれば高気密住宅といえます。
UA値
UA値とは「熱量がどれだけ外部に放出されにくいかを示す数値」のことで、外皮平均熱貫流率ともいいます。
計算式は以下の通りです。
- UA値=総熱損失量÷外皮総面積
外皮とは屋根・外壁・窓・ドアなどの建物表面のことで、これらの総面積で外皮総熱損失量を割った数値がUA値です。
このUA値が低ければ低いほど室内の熱は逃げにくく、断熱性能に優れた高断熱住宅といえます。
国土交通省が、国内を8つのエリアに分けてそれぞれ定めたUA基準値を見てみましょう。
区分 |
エリア |
UA値(省エネ基準) |
UA値(ZEH基準) |
1・2 |
北海道 |
0.46 |
0.4 |
3 |
青森県・岩手県・秋田県 |
0.56 |
0.5 |
4 |
宮城県・山形県・福島県・栃木県 |
0.75 |
0.6 |
5・6 |
茨城県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・富山県・石川県・福井県・山梨県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県 |
0.87 |
0.6 |
7 |
宮崎県・鹿児島県 |
0.87 |
0.6 |
8 |
沖縄県 |
– |
– |
※参考:住宅における外皮性能|国土交通省
次に、同様に国土交通省が発表している省エネ性能(高断熱性能)に係る上位等級の基準も見ておきましょう。
目安として、一般家庭における標準的な冷暖房の一次エネルギー消費量について、等級6で概ね30%、等級7で40%削減できる水準とされています。
<一戸建て住宅の断熱性能等級別比較>(単位:UA)
地域区分 |
|||||||
等級 |
等級定義 |
1・2 |
3 |
4 |
5・6 |
7 |
8 |
7 |
熱損失等のより著しい削減対策がされている |
0.20 |
0.20 |
0.23 |
0.26 |
0.26 |
– |
6 |
熱損失等の著しい削減対策がされている |
0.28 |
0.28 |
0.34 |
0.46 |
0.46 |
– |
5 |
熱損失等のより大きな削減対策がされている |
0.4 |
0.5 |
0.6 |
0.6 |
0.6 |
– |
4 |
熱損失等のより大きな削減対策(建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)がされている |
0.46 |
0.56 |
0.75 |
0.87 |
0.87 |
– |
3 |
熱損失等について一定程度削減されている |
0.54 |
1.04 |
1.25 |
1.54 |
1.81 |
– |
2 |
熱損失等の小さな削減対策がされている |
0.72 |
1.21 |
1.47 |
1.67 |
2.35 |
– |
1 |
その他 |
– |
– |
– |
– |
– |
– |
※参考:住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設|国土交通省
効果的に光熱費を節約できる等級6以上を目指す場合、標準的なUA値0.87程度では効果が薄く、できればUA値0.46以下を確保する必要があることがわかります。
UA値0.6程度(等級5)で抑えても、光熱費の節減効果を実感できるレベルには至りません。
そのため、やはり0.46(等級6)以下が望ましいといえます。
高断熱住宅の仕組み
高断熱住宅は上記でも説明した通り、夏は涼しく冬は暖かい特性を持った高機能住宅です。
ここでは、高機能をもたらす断熱の仕組みについて解説します。
- 内断熱
- 外断熱
それぞれ見ていきましょう。
内断熱
内断熱は最も一般的な断熱方法の1つで、断熱材を建物の内側に入れる工法です。
プラスチック製の隙間断熱材や吹付け断熱、グラスウールなどの天然繊維系断熱材を柱などの間に埋めて断熱効果を高めるのが一般的です。
内断熱は、費用も抑えやすく工事も取り組みやすい特徴があります。
外断熱
外断熱とは、外壁仕上げ材のすぐ内側を断熱材で隙間なく埋めることで断熱層を作る工法です。
断熱材で建物全体を覆うように敷き詰めるのが特徴で、屋根や外壁が蓄熱効果を発揮するため、一般的に内断熱よりも高い保温効果が期待できます。
しかし、外断熱は内断熱に比べて施工が大掛かりになり、その分工事費も高くなる場合が多くあります。
内断熱・外断熱ともに、UA値0.46を達成していれば、室内の極端な温度差や窓の結露を防いでくれます。
そのため、UA値は断熱材を選ぶうえで必要な基準の1つです。
建匠の魅力の1つは、UA値0.46が標準仕様である『極断熱の家』です。
極断熱には内断熱・外断熱の両方があり、仕様はUA値0.46・0.36・0.26・0.14の4段階です。
高気密・高断熱住宅を建てるメリット
ここでは、高気密・高断熱住宅を建てるメリットについて解説します。
- ヒートショックのリスクを減らせる
- 遮音性が高い
- 外気の影響が小さい
- 室内の温度差がない
順に見ていきましょう。
ヒートショックのリスクを減らせる
ヒートショックとは、温度の急激な変化によって血圧が大きく変動し、失神したり場合によっては心筋梗塞や脳卒中という重篤な病気を引き起こしたりする健康被害のことです。
特に、寒い冬場に暖かい部屋から温度の低いトイレや浴室に移動する際に発症しやすいことを覚えておきましょう。
高気密・高断熱の住宅であれば、居宅内の温度差が少なくなるのでヒートショックを発症するリスクが低くなります。
高気密・高断熱住宅は、光熱費だけではなく、住まう人の健康に対しても大きな効果をもたらすといえます。
遮音性が高い
高気密住宅は隙間が少ないため、外部からの空気の流入が少ないのと同時に室内から外部に流れる空気も少量になります。
そのため、空気の流れによって伝わる音量も少量となり、結果的に遮音性が高まります。
また、グラスウールなどの断熱材は、断熱効果以外に音を吸収する性質を持っています。
このように、高気密・高断熱住宅は本来の機能に付随して高い遮音効果も得られる点が特徴です。
外気の影響が小さい
高気密・高断熱住宅は、外気の影響を受けにくい性質を持っています。
そのため、室内の温度や空気の流れは一定に保たれ、高齢者や幼児にとって快適な生活空間が維持できるでしょう。
また、外気の影響を受けにくいことにより、建物そのものだけでなく各住宅設備の傷みも減少しランニングコストを抑えやすくなります。
室内の温度差がない
高気密・高断熱住宅は、外気の影響を受けにくいため、どの部屋にいても大きな温度差がありません。
どの部屋にいても室温が一定に保たれやすいので、冬場に「足元が冷えて耐えられない」や、夏場に「頭がのぼせた感じになる」などの、温度差による不快感が軽減されます。
高気密・高断熱住宅を建てるデメリット
高気密・高断熱住宅を建てた際のデメリットも見ておきましょう。
- 空気やにおいがこもりやすい
- 壁の内側で結露が発生するリスクがある
- 建築費が高くなりがちである
1つずつ見ていきましょう。
空気やにおいがこもりやすい
高気密だと隙間が少ないため、室内の空気が外に排出されにくくなり、においがこもりやすくなります。
室内に空気やにおいをこもらせないためには、適度な換気が欠かせません。
住宅における換気については、シックハウス症候群や冬場のストーブによる一酸化中毒などを避けるために、建築基準法によって一定の基準が設けられています。
石油ファンヒーターや石油ストーブの排気には少量とはいえ一酸化炭素が含まれているので、高気密・高断熱住宅での利用は控えましょう。
壁の内側で結露が発生するリスクがある
高気密・高断熱住宅の場合、目に見える窓や壁ではなく外壁と内壁の間に内部結露が発生することがよくあります。
断熱性能が高い分外気と室内の温度差が生じやすく、その温度差によって内部結露が発生します。
結露を放置しておくと断熱材が機能しなくなったり、構造柱が腐食したりする危険性もあります。
こうした結露を防止するために、外壁と断熱材の間に透湿防水シートを設置したり、室内側の石こうボード手前に防湿気密シートを貼ったりして対策を講じるのが一般的です。
このように、高気密・高断熱住宅であるために生じる結露もあるので、こまめに換気するようにしてください。
建築費が高くなりがちである
高気密・高断熱住宅は、通常より建築費が高くなりがちです。なぜなら、断熱材などの資材だけでなく、サッシや防湿ガラスなどにもコストがかかる場合があるからです。
ただし、前述した通り光熱費を大きく削減させることが可能であるため、自分の生活サイクルを考慮して高気密・高断熱住宅を検討しましょう。
高気密・高断熱住宅で後悔しないためのポイント
ここでは、高気密・高断熱住宅で後悔しないためのポイントを解説します。
- 窓やサッシも高気密・高断熱仕様のものを選ぶ
- 換気システムを整える
- 実績があり信頼できる工務店を選ぶ
順番に見ていきましょう。
窓やサッシも高気密・高断熱仕様のものを選ぶ
高気密・高断熱住宅を実現したいのであれば、外気の影響を受けやすい開口部(窓やサッシ)の仕様にもこだわりましょう。
サッシには、アルミサッシ・樹脂サッシ・木製サッシの3種類があり、できれば樹脂サッシか木製サッシを選ぶことをおすすめします。
アルミサッシは、樹脂サッシに比べて熱伝導率は1000倍で熱損失率は3倍と、外気温の影響を非常に受けやすく、結露しやすいともいえます。
また、窓ガラスはできる限り単板ガラスを避け、トリプルガラスを選びましょう。
トリプルガラスは3枚のガラスの間に空気層が2層あるガラスのことで、2枚のガラスでできているペアガラスより高い断熱性能を持ちます。
また、部屋の冷暖房効率の向上につながるため、省エネ対策としても効果的です。
高気密・高断熱住宅を目指すのであれば、窓は「樹脂サッシ(もしくは木製サッシ)+トリプルガラス」を採用するのがおすすめです。
換気システムを整える
高気密・高断熱住宅を目指す場合は、熱交換システムを用いた機械換気(第1種換気)をおすすめします。
機械換気(第1種換気)とは、吸気及び排気をどちらも機械によって行う換気方法です。
機械換気には、夏は暖かい空気、冬は冷たい空気が入り込んでしまう欠点があるものの、熱交換システムを採用すれば問題ありません。
熱交換システムは、夏の暑い外気は冷やして取り込み、冬の冷たい外気は温めてから室内に取り込んでくれるので、快適な暮らしが実現できます。
デメリットとして、消費電力が多少増加する点と施工コストが上がる点があります。
しかし、高気密・高断熱住宅を目指す場合にはおすすめのシステムです。
実績があり信頼できる工務店を選ぶ
高気密・高断熱住宅を建築する場合は、工務店選びが重要になります。
高気密・高断熱住宅を商品ラインナップに持っている、もしくは高気密・高断熱住宅の施工実績を豊富に持っている工務店を選びましょう。
メーカーによって断熱方法(内断熱or外断熱など)や仕様する断熱材も違うので、工法や使用剤について、詳しく説明してもらいましょう。
高気密・高断熱住宅を建てるなら建匠の『極断熱の家』がおすすめ
建匠では、高知県を中心に高気密・高断熱住宅をはじめとした住宅を取り扱っています。
建匠の『極断熱の家』シリーズは、最低価格帯の商品「ZERO+」でもUA値0.46、C値1.0を達成しており、コストパフォーマンスの高い住宅です。
また、樹脂サッシ+トリプルガラスを標準採用しており、電気代は無断熱住宅に比べて年間約23万円、2020年断熱義務化基準採用住宅に比べて約15万円の削減を実現しています。
ZERO+は、耐震・耐風最高ランク、ベタ基礎+コーナー補強などフル装備した上で、1棟(施工面積66.11㎡)単価:880万円(税込)〜という低価格です。
初めてマイホームを計画する方でも検討しやすい価格帯ですので、建匠の『極断熱の家』をぜひご検討ください。
高気密・高断熱住宅を建てるならデメリットをカバーしよう
現代は、世界的に温暖化や異常気象、パンデミックなど環境に起因するさまざまな問題を抱えています。
国内の住宅市場においても、加速する温暖化を抑えるべく省エネ住宅が推奨されており、今回のテーマである高気密・高断熱住宅の重要性はさらに高まっていくでしょう。
高気密・高断熱住宅がさらに普及すれば使用電力量を抑えられ、光熱費を大幅に削減できます。
高気密・高断熱住宅は、トータルの建築コストが高い点や結露しやすい点などがデメリットとしてあります。
しかし、こうしたデメリットは、高気密・高断熱住宅の持つメリットで十分に相殺され、年月が経つほどにメリット部分が大きくなるでしょう。
こうした点を踏まえて、ぜひ高気密・高断熱住宅を検討してみてください。