離婚時に住宅ローンの支払いはどうなる?返済方法やリスク、対策も解説
離婚するときに住宅ローンの支払いはどうなるのか?という疑問を抱えている人は少なくありません。
そこで実際に離婚するとなると、財産分与のときに住宅ローンはどのような扱いになるのでしょうか。
本記事では離婚時に住宅ローンの支払いがどうなるかを解説し、離婚時にローンが残っているときに考えられるリスクについても紹介します。
Contents
そもそも住宅ローンが残っている場合に離婚できる?
「住宅ローンの残債があると離婚できない」と考える人は多いです。
しかし、住宅ローンの残債があったとしても離婚することは可能です。
離婚時に住宅ローンの支払いはどうなる?
離婚時には財産分与や法的な手続きを数多く行う必要がありますが、住宅ローンはどのように処理するのでしょうか。
・離婚後の支払い義務は住宅ローンの名義人
・住宅ローンは財産分与の際に折半しなくてよい
ここでは上記の2点について解説します。
離婚後の支払い義務は住宅ローンの名義人
住宅ローンの残債の支払い義務は、ローンの名義人です。
住宅ローンの名義人のパターンは、以下の5つに分かれます。
・夫の単独名義 ・夫の単独名義で妻が連帯保証人 ・妻の単独名義で夫が連帯保証人 ・夫婦共同名義の連帯債務 ・夫婦それぞれが名義人となって、ローンを組むペアローン |
いずれのパターンでも、名義人に住宅ローンの支払い義務があるので、ローンの名義人を確認する必要があります。
名義人を確認するためには、ローンを契約した金融機関に問い合わせてみましょう。
住宅ローンは財産分与の際に折半しなくてよい
離婚するときには財産分与を行います。
財産分与とは夫婦が共同生活を送るときに形成した財産を公平に分けることをいい、対象となるのは不動産や預金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
しかし、住宅ローンに関しては財産分与の対象でないため、折半する必要がありません。住宅ローンは折半したとしても同額ずつ払って返済できるものではないためです。
ただし、折半せずに離婚した場合は名義人の負担だけが重くなってしまうので、住宅ローンの残債は50%に当たる金額を支払うことが一般的です。
【ケース別】離婚時に住宅ローンが残っている場合の返済方法
住宅ローンは性質上、契約形態によって双方が同額ずつ返済できるものではありませんが、離婚後に残債の半額に当たる金額を支払います。
離婚後の返済方法は以下の3つのパターンで異なります。
・離婚後に夫(名義人)が住むケース
・離婚後に妻(非名義人)が住むケース
・離婚時に支払い途中の家を売却するケース
それぞれのパターンで返済方法や対策を解説します。
離婚後に夫(名義人)が住むケース
離婚後に名義人が住むケースは、自分で家のローンを払い続けるのと同意義で、最もトラブルが起きにくいです。
ただし、住宅ローンの名義が単独名義に設定されているかを注意する必要があります。住宅ローンの連帯保証人に配偶者が設定されていると、名義人の返済が遅れてしまったときに、配偶者に支払い命令が下ります。
そのため、連帯保証人を外すか別の親族に変更して対策しましょう。
離婚後に妻(非名義人)が住むケース
離婚後に非名義人が住むケースは、名義人が自分の家のローンを支払っているわけではないため、トラブルが起こりやすく、また手続きも煩雑です。
そのため、あまりおすすめできる返済方法ではありません。
非名義人が家に住み続ける場合、住宅ローンを他の銀行で借り換えて、妻名義にするという返済方法が考えられます。しかし、収入面で難しい条件をクリアしなければならないため、あまり現実的ではありません。
また、非名義人が連帯保証人となっている場合は、連帯保証人の設定を外す必要があります。連帯保証人を外れるにはローンを完済するか、別の金融機関で借り変えましょう。
夫婦それぞれでローンを組むペアローンを組んでいる場合は、単独名義に変更できるか確認しましょう。単独名義に変更できるか確認するには、住宅ローンを借り入れている金融機関に相談します。
単独名義に変更できる条件を満たしていれば、審査に通過した後に、単独名義に変更できます。
離婚時に支払い途中の家を売却するケース
離婚時にローンが残っている状態で、家を売る際には「アンダーローン」か「オーバーローン」かによって対応が変わります。
アンダーローンとはローンの残債よりも家の売却額が高くなることをいいます。住宅ローンを完済でき、財産分与もスムーズに進むため理想的なパターンです。
アンダーローンの場合では売却したお金をローンの返済に充て、もしお金が余った場合には財産分与の対象として、夫婦で分けることができます
オーバーローンとはアンダーローンの反対で、ローンの残債よりも売却額が低いことをいいます。通常不動産を売却するときにはローンを完済して、抵当権を外す必要があります。
しかし、オーバーローンの場合、抵当権を外せられないので、通常の方法では売却できません。
そのため、オーバーローンだと判明したときには自己資金を使って、売却額と合わせてローンを完済するか、任意売却を行って不動産を売却します。
ローンを完済できない場合でも自己資金で補って完済できるのであれば、不動産を売却できます。
また、住宅ローンが残っている状態でも金融機関の合意を得て任意売却をすることで、抵当権が設定されている不動産を売却できます。
離婚時に住宅ローンが残っている場合のリスクと対策
離婚時に住宅ローンが残っていると以下のようなリスクがあります。
・連帯保証人として支払い義務が発生
・家を勝手に売却されてしまう
・使用期限を超えても家を退去しない
・再婚によって住宅ローンの支払いが滞る
ここではリスクについて解説し、それに対処する方法も紹介します。
連帯保証人として支払い義務が発生
仮に妻が連帯保証人に指定されていると、夫のローンの返済が滞ってしまったときに、妻側に支払い義務が発生します。返済が滞った段階で金融機関は連帯保証人に対して返済を要求するでしょう。
対策としては、離婚前に連帯保証人から外れるようにしましょう。連帯保証人を外れるためには名義人の親族で新しい保証人を立てるか、連帯保証人なしで他の金融機関に借り換える方法があります。
ただし、いずれの方法もクリアするのが難しいため、クリアできなかったときのために「公正証書」を作成するのがおすすめです。
公正証書に強制執行許諾事項を記載することで、あらかじめ決めたおいた義務を履行しなかったときに、相手方の財産の差し押さえを強制執行できます。
家を勝手に売却されてしまう
ローンの非名義人が家に住み続ける場合、名義人が勝手に家を売却するリスクがあります。家が売却されてしまうと、所有権が他人に移るので、当然非名義人は住み続けることはできなくなってしまいます。
対策としては、不動産の名義を非名義人に変更することが理想的です。名義変更が難しい場合には離婚協議書を作成して、所有権を手放さないことを記載しましょう。
使用期限を超えても家を退去しない
非名義人を家に住み続けさせる場合は名義人にもリスクがあります。
よくある例としては、子どもが中学生になるまでの間は無料で住み続け、それ以降は引越すという取り決めをしても、使用期限を越えて家を退去しないというケースがあります。
対策として、使用期限を定める場合は離婚協議書に期間や権限の内容を記載しておきましょう。
再婚によって住宅ローンの支払いが滞る
非名義人である妻が家に住み続けて、名義人の夫がローンの支払いを続けるような場合では夫側が再婚するに伴って、ローンの支払いが滞ってしまうことが頻繁にあります。
住宅ローンの返済は金額も大きく、長期間にわたるため、夫側が再婚すると新しい家庭に資金を優先したいため、住宅ローンの返済を止めてしまうことが多くあります。
支払いが滞ってしまうと、家を差し押さえられ、強制的に退去することになり、急に住む場所がなくなる可能性があります。
ローンの返済が滞るのを防ぐには離婚協議書を作成し、離婚時の話し合いを公的な記録で残しておきましょう。ローンの支払い義務について明記しておくと、支払いが滞った際でも相手に支払いを要求できます。
離婚時に住宅ローンが残っている場合にやるべきこと
離婚時に自分がローンの名義人や連帯保証人の場合、以下の4点について確認しておきましょう。
・家の名義人を調べる
・離婚時の家の価値を調べる
・住宅ローンの残債額を調べる
・住宅ローンを組んだ銀行に連絡する
あらかじめやるべきことを確認しておくと、後々トラブルを避けられるので、話し合うのが気まずかったとしても把握しておきましょう。
家の名義人を調べる
非名義人が所有者移転登記をしないまま離婚後に家に住み続ける場合、不利な立場におかれてしまいます。
なぜなら、家の名義人は勝手に家を売ることができますし、名義人に万が一のことがあった場合、相続人に家が相続されてしまうからです。
その場合、離婚時には家の名義人を調べておきましょう。名義人を調べるには法務局で登記簿謄本を取得すると知ることができます。
離婚時の家の価値を調べる
離婚時に家を売却する、しないに関わらず、家の価値がいくらなのかを知っておくことは重要です。
家の価値を知っておくと、万が一家を売らなければいけない状況になったときに住宅ローンを完済できるかを把握できます。
住宅ローンの残債額を調べる
上記と似ていますが、家を売ったときにアンダーローンかオーバーローンになるのか判断できるため、ローンの残債額を調べるのは重要です。
残債額を確認する方法は主に3つあります。
1つ目は返済予定表を確認することです。返済予定表は契約当初に郵送される書類で、ローンが返済されるまでのスケジュールが詳細に記載されています。
2つ目の方法はローンを借り入れている金融機関のウェブサイトでローンの残債額を確認できます。銀行のインターネットサービスに加入している場合、いつでも残債額を把握できます。
3つ目の方法は残高証明書を確認することです。契約時に毎年郵送されるように設定していると10〜11月に設定した住所に書類が届きます。
住宅ローンを組んだ銀行に連絡する
銀行に知らせる前に離婚をしてしまうと、ローンによっては契約違反となる可能性があります。
契約違反になったからといって、一括返済が求められる訳ではありませんが、離婚する前に住宅ローンを組んだ銀行に連絡して、今後の返済計画について相談しておきましょう。
離婚時に住宅ローンを支払ってもらう方法
住宅のローンは離婚したとしても支払い続ける必要があります。
ただし、非名義人が住むケースでは名義人が支払いを拒んでしまうことがあるため、あらかじめ対策しておきましょう。
・一括で残債分を支払ってもらう
・公正証書を作成する
・連帯保証人を外れる
離婚時に住宅ローンを支払ってもらう方法は上記の3つがあります。
一括で残債分を支払ってもらう
住宅ローンの支払いは長期間に渡るため、相手方の都合によって支払われないことがあります。
そこで、離婚時にローンの50%に当たる金額を一括で受け取っておくと、後々トラブルを防ぐことができます。
多額の現金が要求されるため、簡単な方法ではありませんが、資金に余裕がある場合はこの方法を採るのがおすすめです。
公正証書を作成する
公正証書を作成すると、住宅ローンの支払いが滞った際に財産の差押えを強制執行できます。
ローンの支払いを催促できるので、配偶者がローンの支払ってくれるか不安な人は作成しておきましょう。
連帯保証人を外れる
住宅ローンの連帯保証人として指定されていて、相手が家を取得するようなときは、連帯保証人を外しておくと安心です。
新しい連帯保証人と金融機関の了承を得る必要がありますが、連帯保証人が外れたら、名義人の支払いが滞ったとしても、ローンの支払いを要求されることはなくなります。
離婚時の住宅ローンに関するよくある質問
離婚時の住宅ローンについて説明しましたが、ここでよくある質問について解説します。
・住宅ローンで離婚できないケースはある?
・離婚時に住宅ローンは養育費と相殺できる?
・離婚時に住宅ローンの名義変更はできる?
・離婚時に住宅ローンは借り換えできる?
・離婚しても今の家に住み続けられる?
上記の質問について回答します。
住宅ローンで離婚できないケースはある?
住宅ローンは財産分与の対象ではないため、トラブルに発展しやすく離婚できない原因となることがあります。
離婚できないケースとして多いのは、夫婦でペアローンを組んでいることです。
住宅ローンには「ローンの名義人と家の居住者が同じである」という規約があり、ペアローンを借りている状態だと離婚することができません。
離婚するにはペアローンを借りている金融機関から別の金融機関に借り換える必要がありますが、残債額が高額であれば審査に通過しにくくなり、離婚できなくなってしまいます。
離婚時に住宅ローンは養育費と相殺できる?
夫婦間で合意を得ていれば、住宅ローンの支払いを養育費代わりにすることが可能です。
離婚時に住宅ローンの名義変更はできる?
基本的に住宅ローンの名義変更は難しいですが、離婚時においては可能です。ただし新名義人側に返済能力があるときに限ります。
新名義人に返済能力があると金融機関が判断すれば、住宅ローンの名義を変更できます。
離婚時に住宅ローンは借り換えできる?
離婚時に住宅ローンを借り換えることは可能です。
名義変更ができない場合は借り換えを検討しましょう。
離婚しても今の家に住み続けられる?
離婚しても家に住み続けることは可能です。
家に住むのが名義人か非名義人かで必要になる手続きが変わるので、住宅ローンの名義が誰になっているのか確認しましょう。
まとめ:離婚時の住宅ローンはリスクをしっかり把握しておこう
離婚にはさまざまな手続きが必要になり、精神的な負担となります。
特に住宅ローンが残っている家をどうするかという問題を解決するには時間がかかります。離婚することになったら、家の価値や名義人を調べて、どのように対応するかを把握しておきましょう。
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