ZEH住宅の補助金制度とは?性能要件やスケジュールも解説
急速に進む円安、終わりの見えないロシアのウクライナ侵攻、長期化するコロナなどの影響で、家庭用エネルギーの価格も急騰し、私たちの家計に及ぼす影響も少なくありません。
「これからマイホームを建築するなら、補助金事業が展開されているZEH住宅を検討したい」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ZEH住宅を建築する際の補助金と、必要な性能要件や申請方法、スケジュールについて解説します。
【この記事でわかること】
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Contents
そもそもZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?
ZEH(ゼッチ)住宅とは、これからの時代において「標準となる家の形」のことで、エネルギー収支をゼロにすることを目指した家のことです。
- ZEHの基準
- ZEHの対象者
ここからは、上記2つの観点からZEHについて詳しく解説していきます。
ZEHの基準
ZEHの基準は、「断熱性能を高めてエネルギー量を削減したり、太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムを導入したりして年間消費エネルギーが実質ゼロである」ことです。
「2030年までに新築住宅の100%をZEH住宅にする」という目標の下、経済産業省と国土交通省、さらに環境省が連携して積極的に補助金事業に取り組んでいます。
ZEHにおいては、以下の3つが重視されます。
- 断熱性能の向上
- 高効率な設備・システムの導入
- 再エネの導入
順番に解説していきます。
<断熱性能の向上>〜エネルギー削減効果〜
断熱性能は「外気の温度に左右されない能力のこと」で『UA値』で評価されます。
ZEH基準では、UA値0.4以下〜0.6(W/㎡k)以下が必要です。
『UA値(外皮平均熱貫流率)』とは?
※「外皮」とは、住宅の外周(外壁・屋根・窓など)の部分のこと |
具体的には、外壁材に「高性能断熱材」を導入したり、開口部(窓)に「真空断熱ガラス」や「高断熱樹脂フレームのサッシ」を採用したりしてエネルギーを削減します。
<高効率な設備・システムの導入>〜エネルギー削減効果〜
空調設備や給湯、照明機器に省エネ対応型のものを使用しなければなりません。
具体的には、高効率型エアコン(エネルギー消費量が計算できるプログラム内蔵)やLED照明、熱交換型換気扇、電気ヒートポンプ給湯機などを利用してエネルギーを削減します。
<再エネの導入>〜再生可能エネルギー創出効果〜
太陽光発電システムや燃料電池、蓄電池などの設備によって再生可能エネルギーを創出することにより、一次エネルギーの使用量の削減を目指します。
「一次エネルギー」とは?
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ZEH住宅の基準における、具体的な数式は以下のとおりです。
削減一次エネルギー量 + 創出一次エネルギー量 ≧ 年間消費一次エネルギー量 |
ZEHの対象者
ZEHの対象者は以下の条件を満たす人です。
- ZEH住宅を建築する人
- ZEH住宅(ZEH支援事業のみ)を購入する人
同時に以下の要件を満たしていることが必要です。
- SII(一般社団法人:環境共創イニシアチブ)に登録されたZEHビルダー、またはプランナーが設計、建築、販売する住宅であること
- 申請者が常時居住し生活する住宅であること
- 補助金交付決定日以降に事業着手すること
ZEH住宅は性能別に3種類あり
ZEH住宅は、ZEH基準を満たす断熱性と省エネ性を備えた上で、再生可能エネルギーの「創出性能」のグレードによって『ZEH』、『Nearly ZEH』、『ZEH Oriented』の3種類があります。
下の表は、ZEHの種類別『年間必要省エネ率』(対年間消費一次エネルギー量)を、まとめたものです。
削減一次エネルギー量(断熱設備) |
創出一次エネルギー量(再生設備) |
対年間消費一次エネルギー削減量 |
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ZEH |
20%以上 |
必要 |
100%以上 |
Nearly ZEH |
20%以上 |
必要 |
75%以上100%未満 |
ZEH Oriented |
20%以上 |
不要 |
不問 |
また、ZEH住宅は性能要件によってさらに4つの区分に分かれます。
ここからは、これらを踏まえて順番に解説していきます。
ZEH
『ZEH』に区分される住宅は、高断熱資材や高効率設備、太陽光発電システムなどによって年間消費エネルギーの100%以上をまかなえる住宅です。
また、以下の条件を満たしている必要があります。
- UA値が0.4以下〜0.6以下(地域によって変動)
- 削減一次エネルギー量(高断熱資材や高効率設備等による)が、年間消費一次エネルギー量の20%以上
- 創出一次エネルギー量(太陽光発電システム等による)を削減一次エネルギー量に加えて、年間消費一次エネルギー量の100%以上を削減
Nearly ZEH
『Nearly ZEH』に区分される住宅は、高断熱資材や高効率設備、太陽光発電システムなどによって年間消費エネルギーの75%以上をまかなえる住宅です。
主に寒冷地や多雪地域などの低日射地域に限って適用されます。
また、以下の条件を満たしている必要があります。
- UA値が0.4以下〜0.6以下(地域によって変動)
- 削減一次エネルギー量(高断熱資材や高効率設備等による)が、年間消費一次エネルギー量の20%以上
- 創出一次エネルギー量(太陽光発電システム等による)を削減一次エネルギー量に加えて、年間消費一次エネルギー量の75%以上を削減
ZEH Oriented
『ZEH Oriented』に区分される住宅は、以下の条件を満たした住宅です。
- 高断熱資材や高効率設備によって、ZEHの基準を満たす「削減一次エネルギー量20%以上」の断熱性・省エネ性を確保している
- 太陽光発電システムなどによる創出エネルギー設備は備えていない
都市部の狭小地で北側斜線制限のある85㎡未満の土地に2階建て以上を建築する場合などに適用されます。
性能要件で分かれるZEH住宅の4区分
ZEH住宅は、性能要件により以下の4区分に分類されます。
- ZEH
- ZEH+
- 次世代ZEH+
- 次世代HEMS
下に行くほど省エネ性能がアップします。
この区分ごとに対象の補助金事業があり、補助金額が決まっています。
ZEHの性能要件と補助金
※画像引用:一般社団法人環境共創イニシアチブ
ZEH住宅の対象事業は、環境省の『戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス (ZEH)化支援事業』です。
その他に、国土交通省の『地域型グリーン化事業』や『こどもみらい住宅支援事業』も補助金対象になるので、補助金の額や要件を比較してみましょう。
また、複数の事業にまたがる補助金申請が可能かどうかもチェックしましょう。
補助金申請対象者 |
補助金額 |
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地域型住宅グリーン化事業 |
施工グループ(工務店など) |
上限100万円/戸 |
こどもみらい住宅支援事業 |
子育て世帯 若者夫婦世帯 |
100万円 |
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化支援事業 |
ZEH住宅建築主 新築ZEH住宅購入主 |
定額:55万円/戸 |
地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化住宅事業とは、国土交通省によって選択されたグループが建築する木造のZEH住宅に対して、補助金が交付される制度のことです。
「国土交通省から選択されたグループ」とは?
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ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
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対象住宅 |
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こどもみらい住宅支援事業
こどもみらい住宅支援事業とは、「子育て世帯」や「若夫婦世帯」がZEH住宅を建築したり購入したりした場合に、補助金が交付される制度です。
【子育て世帯】
【若夫婦世帯】
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ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
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対象住宅 |
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戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業とは、ZEH住宅を新築もしくは購入する方に対し補助金が交付される制度です。
一般的にZEH住宅補助金とは、この制度を指します。
ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、追加補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
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対象住宅 |
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ZEH住宅は、上記の通り『ZEH化等支援事業』だけでなく、補助金額の大きい『地域型住宅グリーン事業』や『こどもみらい住宅支援事業』も利用できます。
性能要件や補助金額を比較して、自分に最も適した補助金制度を選びましょう。
ZEH+の性能要件と補助金
ZEH+の対象事業に『戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業』があります。
ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、追加補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
【液体式】65万円/戸もしくは80万円/戸 【空気式】90万円/戸
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対象住宅 |
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次世代ZEH+の性能要件と補助金
ZEH+の対象事業に、『次世代ZEH+実証事業』があります。
ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、追加補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
【液体式】17万円/戸 【空気式】60万円/戸 |
対象住宅 |
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次世代HEMSの性能要件と補助金
ZEH+の対象事業として、『次世代HEMS実証事業』があります。
ポイント、申請対象者、交付要件、補助金額、追加補助金額、対象住宅について順番に見ていきましょう。
ポイント |
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申請対象者 |
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交付要件 |
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補助金額 |
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追加補助金額 |
【液体式】17万円/戸 【空気式】60万円/戸 |
対象住宅 |
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ZEH住宅における補助金の申請方法とスケジュール
<交付申請方法〜概要〜>
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化支援事業の交付申請は、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が提供する『戸建ZEH補助金申請ポータルサイト』(以下、ZEHポータル)を利用した「電子申請」で行います。
<スケジュール〜概要〜>
2022年11月以降の申請は「第4次公募」のみです。
第4次公募は「複数年(2年)」事業となり、本年度(1年目)と後年度(2年目)それぞれに「交付申請」と「完了実績報告」が必要になります。
ここからは、申請方法とスケジュールをさらに詳しく見ていきましょう。
ZEHの申請方法
ZEH住宅の申請は、上記のとおり『ZEHポータル』を利用した電子申請で行います。
手順は以下のとおりです。
- 公募要領の確認
- ユーザー登録
- 交付申請
各ステップについて解説していきます。
【ステップ1:公募要領の確認】
- 公募方法は「一般公募」のみ
- 公募期間は、2022年11月21日〜2023年1月6日、受付は「先着順」
- 申請の受付は公募期間の平日(月曜〜金曜)のみ行い、毎日17時に締め切った上で17時以降の申請は翌日申請扱いになる
- 公募期間中に申請金額の合計が予算に到達した場合は、「その直前の日の17時集計まで」の申請を受付対象とし、それ以降の申請は受理されない
- 受付可能な補助金の予算残額は、SIIのホームページで公表されるので、必ず事前に確認する
- 第4次公募採択件数は個人申請、法人申請を含めて約1,000件
※参考:SII公式ホームページ
【ステップ2:ユーザー登録】
- ZEHユーザー登録期間は2022年5月16日(金)18時〜2023年1月6日(金)17時
- 申請者は、ZEHポータルサイトにアクセスして、画面の指示に従いユーザー登録
- ユーザー登録の際は、本人確認のため「メールアドレス」が必要
- ユーザー登録手続き後、ログインIDと初回パスワードが発行され、メールアドレスにメールが届く
- ユーザー登録の詳細は『ZEHポータルマニュアル<ユーザー登録編>』を参照
- 以上の手続きを終えて、ユーザー登録は完了
※参考1:ZEHポータルサイト
【ステップ3:交付申請】
- 発行されたログインID、初回パスワードでZEHポータルにログインし、自分の使いやすいパスワードに変更する
- ZEHポータルにログインし『ZEHマニュアル<4次公募・交付申請編>』を参考に、ZEHポータル交付申請画面に必要な情報を入力する
- 必要な情報の入力を終えたら、交付申請に必要な書類をアップロードした後、「申請」ボタンをタップして申請完了
- ZEHポータル画面に「申請完了しました」と表示が出るのを必ずチェックする
「交付申請に必要な書類」とは? <必須書類>
運転免許証・運転経歴書・マイナンバーカード・保険証・日本国パスポート・印鑑証明書・外国人登録証明書・身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保険福祉手帳:日付記載要 <申請内容に応じて必要になる書類>
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ZEHのスケジュール
次に、ZEHのスケジュールについて解説します。
第4次公募は、以下の画像のような流れで行われる複数年事業です。
<本年度(1年目)スケジュール>
本年度(1年目)は、以下の表のようなスケジュールです。
公募期間 |
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交付決定 |
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事業期間 |
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完了実績報告 |
※事業完了日とは、省エネ性能表示の評価書を取得し、その費用の支払いを終えた日のこと |
翌年度補助事業開始申請書の提出 |
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補助金額の決定 |
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補助金支払い |
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<後年度(2年目)のスケジュール>
後年度(2年目)は、以下の表のようなスケジュールです。
公募期間 |
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交付決定 |
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事業期間 |
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完了実績報告 |
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補助金額の決定 |
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補助金支払い |
※工事の進捗状況等に応じて個人差あり |
第4次公募の申請は、複数年(2年)にまたがる事業のため、申請手続きも完了実績報告も2度必要であることに注意が必要です。
ZEH住宅の補助金制度に関するよくある質問
ZEH住宅の補助金制度に関するよくある質問を紹介します。
- ZEH住宅のメリット・デメリットは?
- ZEH住宅の補助金申請に間に合わない場合はどうすればいい?
- ZEH住宅における補助金の申請はいつまで?
上記3点に対して回答していきます。
ZEH住宅のメリット・デメリットは?
ZEH住宅のメリット・デメリットをまとめます。
<メリット>
- 光熱費を抑えられる
- 補助金がもらえる
- ヒートショックを予防する
- 災害時の対応能力がアップする
- 住宅の資産価値が上がる
<デメリット>
- 初期コスト(建築費等)が上がる
- 屋根のデザインが制限される
- 太陽光発電の発電量は安定しない
- 省エネ設備のメンテナンス費用がかかる
- 補助金が入金されるのは引渡しを受けてから2〜3ヶ月後になる
ZEH住宅の補助金申請に間に合わない場合はどうすれば良い?
まず、「本当に間に合わないかどうか」を確認しましょう。
申請時に最低限必要な書類は、原則「配置図」と「本人確認書類」ですが、それすらも用意できない状況なら、次回の公募で申請するべきでしょう。
仮に時間的に間に合うことが確認できたとしても、資金計画や補助金の内容、効果についてしっかりと吟味できていないなら、再考する勇気も必要です。
補助金を申請するには、建築業者との請負契約も必要です。
引渡し時期、補助金交付時期についても事前によく打ち合わせをしておきましょう。
ZEH住宅における補助金の申請はいつまで?
ZEH住宅の補助金申請は、SIIが発表する公募期間内に申請しなければなりません。本年度の第4次公募の申請は、2022年11月21日(月)10時〜2023年1月6日(金)17時必着です。
申請の受付は「申込順」で、かつ申請金額の合計が予算に到達した場合は「その直前の日の17時集計まで」の申請を受付対象とし、それ以降の申請は受理されないことに注意しましょう。
補助金申請は、公募初日に提出できるように準備しておきましょう。
ZEH住宅の補助金制度は次世代の家づくり
「ZEH住宅と補助金」についてまとめました。
- 政府は2050年までに新築住宅を全てZEH住宅にする方針
- 使用エネルギーを削減すると共に再生エネルギーを創出することはこれからの生活に不可欠
- ZEH住宅は、光熱費を抑えるだけでなく災害にも強い
- ZEH住宅補助金申請は、公募がスタートしたらすぐに行うべき
- 2022年第4次公募は複数年事業となり、交付申請も完了実績報告も2度必要
ZEH住宅の補助金申請は、手続きが煩雑で確認する項目や用意しなければならない資料も多いため、簡単にできる作業ではありません。
そのため、自分で申請内容を何度も見直すことは大切ですが、ZEH住宅を数多く手がけている建築業者や設計事務所に相談して進めていくことをおすすめします。
建匠は、ZEH住宅のご相談や光熱費を抑えて、かつ暮らしやすい家づくりを提案いたします。
ZEH住宅の申請についてのご相談も含めて、ぜひ一度お問い合わせください。