住宅ローンを多めに借りるメリットは?デメリットや多めに借りる方法も
「どうしても今購入したい物件がある」、「子供が就学する前にマイホームが欲しい」などの考えがあっても、手元資金不足のため購入を悩んでいる人もいるでしょう。
事前に用意しなければならない保険料や登記費用などの諸費用は、住宅購入価格の5〜7%程度であるため、手元資金に負担を感じる人は少なくありません。
この記事では、住宅ローンを多めに借りる方法やオーバーローンについて解説します。
住宅ローンを多めに借りようか悩んでいる人は、ぜひ本記事を最後までお読みください。
【この記事でわかること】
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Contents
そもそも住宅ローンは多めに借りられる?
結論からいうと、住宅ローンを多めに借りることは可能です。
ただし、全ての金融機関が多めに融資してくれるわけではなく、融資額や使途を個人が自由に決められるわけではありません。
住宅購入費(土地代金+建物代金)に加えて、必要な諸費用分などをローンに組み込んでもらうことを”オーバーローン”といいます。
ここでは、以下の2つの観点からオーバーローンについて解説します。
- 住宅ローンが多めに借りられるケース
- 住宅ローンが多めに借りられないケース
それぞれ見ていきましょう。
住宅ローンが多めに借りられるケース
前提として、オーバーローンができる金融機関とできない金融機関があることを認識しておきましょう。
また、オーバーローンできる金融機関でも、利用できるケースは以下の3つに限られています。
- 住宅を新築・購入する場合の諸費用
- 中古住宅を購入した際のリフォーム費用
- おまとめローンを利用する場合
利用可能なケースがこの2つに絞られていることを、しっかりと認識しましょう。
<諸費用>
住宅を新築・購入した場合は、物件価格に対して5〜7%程度の諸費用が必要になります。
諸費用については、オーバーローンを認めてくれる金融機関もあるので、事前にチェックしましょう。
主な諸費用には、以下のものがあります。
- 火災保険料・地震保険料(保険会社)
- ローン保証(保証会社)
- ローン事務手数料(金融機関)
- 金利手数料(金融機関)
- 不動産仲介手数料(不動産会社)
- 登記費用(土地家屋調査士・司法書士)
- 登録免許税
- 印紙税
- 引越し費用(引越し業者)
- 修繕積立金(分譲マンションの場合)
- 解体工事費(解体業者)
- 付帯工事費(外構業者など)
- 水道負担金など(水道局ほか)
物件価格によっては諸費用が数百万円単位かかる場合もあるので、低金利の住宅ローンで賄えれば大きなメリットになります。
<リフォーム費用>
中古住宅を購入した人のなかには、自分好みにリノベーションしたいと考える人も少なくありません。
この場合、リフォーム費用を住宅ローンでオーバーローンしてくれる金融機関があるので、必要に応じて問い合わせましょう。
リフォーム費用をオーバーローンできるメリットの1つは、通常のリフォームローンに比べてかなり低金利になることです。
実際に、三菱UFJ銀行の住宅ローンとリフォームローンの金利を比較します。
それぞれの金利と利率を、以下の表にまとめました。
ローンの種類 |
金利 |
利率 |
住宅ローン |
変動金利 |
0.345〜0.475% |
固定金利(10年) |
0.69〜0.82% |
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固定金利(全期間型31〜35年) |
1.34〜1.47% |
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リフォームローン |
変動金利(6ヶ月〜15年以内) |
1.99〜2.875% |
※参考:住宅ローン|三菱UFJ銀行公式HP 2023年7月13日現在
上記のように、通常のリフォームローンは、住宅ローンに比べて金利が高いだけではなく返済年数も短期になるため、月々の負担が大きくなります。
リフォームやリノベーションについてオーバーローンをできる金融機関であれば、積極的にオーバーローンを組むことがおすすめです。
<おまとめローン>
他の金融機関で借入しているローンを住宅ローンとまとめることで、多めに借りられるケースもあります。
例えば、JAバンクでは他の金融機関で既に借入しているマイカーローンを、JA住宅ローンにまとめられる商品を提供しています。
いわゆる「おまとめローン」を利用することで、毎月の返済額が数万円減少するケースもあります。
既に借りているローンと住宅ローンをまとめる場合も、住宅購入費より住宅ローンを多めに借りられることを覚えておきましょう。
住宅ローンが多めに借りられないケース
以下の2つのケースでは、オーバーローンを組めません。
- 新調する家具や家電の費用
- 資産運用など、住宅購入と無関係な使途
住宅購入時に家具や家電を新調する場合が多くありますが、こうした費用はオーバーローンに含めません。
新築計画時に施工会社に組み込んでもらったエアコンや家具・調度品の費用はオーバーローンに含められるので、金額面も含めて施工会社とよく相談してみてください。
当然、車などの住宅と無関係な対象はオーバーローンに組み入れられません。
また、オーバーローンして残った余剰金を資産運用などに回すことは契約違反です。
住宅ローンを多めに借りるメリット
住宅ローンを多めに借りる際のメリットは、以下の3点です。
- 住宅ローン控除の恩恵が大きくなる
- 自己資金が少なくても住宅購入できる
- 低金利で長期間借りられる
順に見ていきましょう。
住宅ローン控除の恩恵が大きくなる
諸費用分だけ借入額が増えるので、住宅ローン控除による節税額が大きくなります。
住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高の0.7%に相当する金額を13年間に渡って所得税から控除する制度です。
源泉徴収されているサラリーマンであれば、控除分が戻ってくる形です。
借入額が増えればその分控除額も大きくなるので、ありがたい恩恵といえます。
自己資金が少なくても住宅購入できる
オーバーローンには、手元に資金がなくても住宅購入できるというメリットがあります。
通常は、諸費用や頭金を自己資金で用意しなければ住宅を購入できません。
手元資金を用意しようとしている間に月日が経ってしまい、気に入った物件を買いそびれてしまうケースも考えられます。
オーバーローンは必要な諸費用分まで融資してくれるため、購入したいタイミングですぐにマイホームを手にできるメリットがあります。
低金利で長期間借りられる
住宅ローンは住宅購入に特化した金融商品であるため、他のローンに比べて圧倒的に長期で低金利に設定されています。
理由としては、住宅ローンは戦後から多くの人々に住宅供給を促す政策的意図があり、それが現在でも継続しているからです。
ここでは、三菱UFJ銀行を例に、住宅ローンを他の各種ローンと比較してみます。
それぞれのローンの種類と利率を下記の表にまとめました。
ローンの種類 |
利率 |
住宅ローン |
0.345〜1.47% |
マイカーローン |
1.30〜2.45% |
カードローン |
1.8〜14.6% |
教育ローン |
4.475% |
※参考:マイカーローン(自動車ローン)|三菱UFJ銀行公式HP
※2023年7月時点
住宅ローン金利は他のローンと比べて金利が低いため、諸費用も住宅ローンで賄えれば大きなメリットになり安全性も高まるでしょう。
また、住宅ローンは低金利であること自体がメリットです。
子育てが落ち着き資金に余裕ができた人は、すぐに繰り上げ返済する人が多いですが、低金利であれば早計といえるでしょう。
手元資金に余裕ができた場合、他の金利の高いマイカーローンを一括返済したり、NISAなどの安全性が比較的高い投資先に回したりなどが得策のケースもあります。
このように、年齢や定年のタイミングなどを加味して支払い年数を短くするか、長期間の返済によって月々の負担を軽くするかを見極めることが重要です。
なお、建匠では返済期間を長期にでき、毎月の返済額を抑えられる固定金利を推奨しています。(2023年7月時点)
住宅ローンを多めに借りるデメリット
住宅ローンを多めに借りた際のデメリットは以下の3つです。
- 金利変動の影響を大きく受ける
- 返済額や利息が増える
- 共同ローンではトラブルになるリスクがある
順に見ていきましょう。
金利変動の影響を大きく受ける
変動金利を選択した場合、借入額が大きいほど金利が変動した際の影響が大きくなり、月々の負担がアップします。
総返済額が大きくなるオーバーローンでは、金利変動の影響を大きく受けやすい点がデメリットの1つに挙げられます。
返済額や利息が増える
オーバーローンが組めると通常よりも諸費用分だけ借入額が増え、その結果月々の返済額や利子総額が大きくなります。
オーバーローンに限らず、住宅ローンを組む際は基本的な生活費と将来発生する大きい費用などを想定して、無理のない返済計画を立てましょう。
共同ローンではトラブルになるリスクがある
共同ローンとは、1つのローンに対して自分1人ではなく、配偶者や親子など複数人が債務者になるローンです。
自分だけの与信力では希望の融資額に満たないときなどに、配偶者などの支払い能力を借りて与信力を補填する場合などに利用されます。
しかし、オーバーローンに限ったことではありませんが、共同ローンを組むことは、後々トラブルの原因になるおそれが高いため、あまりおすすめできません。
たとえば、夫婦が離婚した場合、それまで住んでいたマイホームを売却し残債を返済して清算しようとするのが一般的です。
共同ローンで問題となるのは、マイホームがローン残高よりも高く売れなかった場合でしょう。
売却代金で足りない分は自己資金で手当しなければならず、夫婦の両方、もしくはいずれかが返済しなければならないため、トラブルになるリスクがあります。
金融機関と相談して任意売却できたとしても、残ったローンの残債は払い続けなければならないため、夫婦間の返済に関する問題は改善されません。
トラブルになるケースが多いため、共同ローンは十分にリスクを把握した上で利用を検討しましょう。
住宅ローンを多めに借りる際の注意点
住宅ローンを多めに借りる際に注意すべき点は、以下の2つです。
- 借入額は無理のない範囲に留める
- 契約違反にならないように使い方を守る
それぞれ見ていきましょう。
借入額は無理の無い範囲に留める
先ほども触れましたが、住宅ローンは無理のない範囲内で組むことをおすすめします。
日々の基本的な生活費を計算して、将来発生する子供の教育費や親の介護費用、老後の資金などを踏まえた上で、月々に支払える金額を割り出しましょう。
できれば、月々の収入に対する返済比率が20%以下になるように検討することがおすすめです。
返済比率が25%を超えると生活が非常に苦しくなってしまうため、最大でも25%は超えないようにしましょう。
契約違反にならないように使い方を守る
借入額を増やすために、物件の購入価格を改ざんしたり虚偽の書類を提出したりしてはいけません。
金融機関は、全ての支払いの領収証などのコピーを提示するように求め各契約書の金額の裏付けを取るため、虚偽があればすぐに発覚します。
契約違反が発覚すれば、即座に一括返済や違約金を求められることになり、以後住宅ローンを利用できなくなるおそれがあるので注意してください。
住宅ローンは、オーバーローンを組めても物件購入費用や諸費用、リフォーム費用(中古住宅購入の場合など)にしか利用できないことを再度認識しておきましょう。
住宅ローンを多めに借りる方法
住宅ローンを多めに借りる方法としては、以下の2つがあります。
- 収入合算を利用する
- ペアローンを利用する
1つずつ見ていきましょう。
収入合算を利用する
融資額を増やしたい場合は、配偶者や両親などの収入を加えて借入額を増やす”収入合算”という方法があります。
しかし、共同ローンと同じくトラブルに見舞われやすいため、あまりおすすめできません。
自分の収入の範囲内で最大限実現可能な計画を立てるところからスタートしましょう。
ペアローンを利用する
「収入合算は利用したくないけど、なんとかして借入を多くしたい」という場合は、ペアローンを検討しましょう。
ペアローンとは、一定収入のある夫婦や親子などがペアを組んで、それぞれ契約者として住宅ローンを組むことです。
建物名義も夫婦共有名義になり、それぞれが債務者になるため、収入合算に比べてトラブルは起きにくくなります。
2人がそれぞれ契約することで借入額が増え、要望に即した物件を購入しやすくなるでしょう。
また、住宅ローン控除をそれぞれが受けられる点もメリットの1つです。
住宅ローンを多めに借りる際のよくある質問
住宅ローンを多めに借りたいときによくある質問は以下の通りです。
- オーバーローンしていることがバレたらどうなる?
- 住宅ローンを多めに借りて繰り上げ返済してもいい?
- 結局のところ住宅ローンは多く借りたほうが得?
順番に回答します。
オーバーローンしていることがバレたらどうなる?
物件価格と諸費用について全額融資してくれる金融機関であれば、オーバーローンは契約違反にはならず違法でもありません。
問題となるのは、正規の契約書とは別に物件価格を水増しした契約書を作成して金融機関に提出し、融資額を増やそうとした場合などです。
この場合は明らかに私文書偽造に該当し違法になるため、文書偽造罪や詐欺罪に問われて訴えられるおそれがあります。
契約書だけでなく源泉徴収票や預金残高を改ざんする場合も、私文書偽造に当たるおそれがあります。
いずれにしても発覚すれば、訴訟には発展しなくともローンの一括返済を求められ、今後住宅ローンを利用したくても利用できなくなる可能性があるでしょう。
住宅ローンを多めに借りて繰り上げ返済してもいい?
手元資金に余裕がない場合は、住宅ローンを多めに借りて将来的に繰り上げ返済するのも1つの方法です。
できるだけ多くの頭金を入れて総返済額や月々の返済額を少なくすることが理想的ですが、その場合、手元資金が不足してしまう懸念があります。
不測の事態に備えてどの程度の資金を手元に残しておくかを考えた上で、頭金や借入額を検討しましょう。
結局のところ住宅ローンを多く借りたほうが得?
多く借りたほうが得かどうかは、借りる人それぞれの状況によって異なります。
「手元資金に余裕はないが、どうしても購入したい物件がある」という人は、ローンを多めに借りたほうがいい場合があるでしょう。
しかし、ローンを多く借りると総支払額が大きくなるため、「多く借りれば得になる」とは一概にはいえません。
住宅ローンを多めに借りるなら無理のない範囲で借りよう
手元資金に余裕がある人やどうしても購入したい物件がない人などは、無理に住宅ローンを多めに借りる必要はないといえます。
一方で、頭金をあまり準備できる余裕はなくどうしても購入したい物件がある場合は、多めに住宅ローンを組めるか金融機関に相談しましょう。
オーバーローンが可能な金融機関であれば、前述のとおり物件価格と諸費用を融資してくれます。
ポイントは、自分の生活費や将来必要になる費用を計算して無理のない返済計画を立てることです。
まずは、月々の返済額が月収の20%以下に収まるように検討するところからスタートしましょう。
建匠では、建物に関するご相談だけではなく、資金計画に関してもお客様に寄り添いながら最適なプランをご提案いたします。
住宅ローンでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。